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活用実践事例集
2026/03/27
『算数ドリル』で引き出す「数学的な見方・考え方」 ―単位図形に着目し、既習の図形に帰着させる面積学習の実践―

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下村怜史先生
埼玉大学教育学部附属小学校
[1]はじめに
算数科の授業において、教師が複数の教科書や教材を比較検討し、数値や問題場面を吟味しながら数学的活動を意識した授業を展開することは、児童の主体的・対話的で深い学びを実現する上で重要です。
本実践では、一般的に知識・技能の習熟や定着を図るために用いられるドリル教材に着目しました。その中から、児童が数学的な見方・考え方を豊かに働かせることのできる問題を、授業の中心となる問題場面として位置付けました。具体的には、平行四辺形やひし形、曲線を含む図形、三角形などのシールの面積を求める場面において、児童は図形を分解したり移動したりして既習の長方形に変形する等積変形や、図形を倍にして考える倍積変形などの操作を行いました。その際、1辺が1cmの正方形という単位図形の個数に着目しながら面積を考えることができました。
このように、単位図形の個数を数えにくい図形を、数えやすい図形に変形して面積を求める考え方は、第5学年以降で学習する三角形や平行四辺形などの求積において、既習の図形に帰着させて公式を導き出したり、図形の性質を理解したりする際の重要な素地になると考えられます。
本時では、「おもしろい発見がいっぱい!算数ドリル」4年下(東京書籍版)の[オリジナルシールを作ろう]の問題を基にして授業を構成・展開していきました。

[2]授業の実際
導入では、算数ドリルに出題されている4つの図形を切り抜いて提示し、どの図形の面積がいちばん広そうかを問いかけました。
児童は、提示された図形を見比べながら、直感的にどれがいちばん広いかを予想しました。その上で、面積を正確に調べるためには、どのような数量や条件が必要かを考えていきました。児童からは、「縦と横の長さがわかれば求められる」といった、図形を構成する要素に着目した発言や、「マス目があれば面積が求められそう」といった、既習の学習内容を生かそうとする考えが出され、問題解決への見通しをもつことができました。
自力解決では、方眼上で図形を変形させながら単位図形の個数を数えるなど、既習の見方・考え方を働かせて面積を考える児童の姿が見られました。また、図形を切り貼りして既習の長方形に帰着させて求めたり、乗法を用いて計算で求めたりするなど、多様な見方・考え方を働かせることができました。
一方、㋐平行四辺形において、二つの辺の長さに着目し、その積で面積を求めようとする児童もいました。(もうすでに求積公式を知っている児童と考えられる)このような児童に対しては、図形を分解したり移動したりする操作を促し、単位図形の個数に着目して面積の意味を捉え直すことができるようにしました。
これは、辺の長さだけでなく、図形の広がりそのものを量として捉える見方を育てることにつながるものであると考えられます。このように、児童一人ひとりが自分なりの方法で問題解決に取り組む中で、図形を構成する要素や性質に着目して捉えたり、既習の図形に帰着させて考えたりするなど、数量や図形についての感覚を豊かにすることができました。

全体交流では、㋐平行四辺形の面積の求め方について時間をかけて検討していきました。図形を分解・移動して長方形に変形し、単位図形の個数を数えて面積を求める考え方が発表されると、多くの児童から「そうそう」といった共感を示す発言が出ました。同様の見方・考え方を用いることで、㋑ひし形や㋒エプロンの形(曲線を含む図形)、㋓直角三角形についても面積を求めることができることを確認しました。また、面積の数え方として、かけ算を用いるとすぐに面積がわかるなど、次時の面積公式につながるような考え方も出されました。さらに、㋓直角三角形では、図形を2倍にして正方形として捉える倍積変形の考え方を用いた児童がおり、その考えを取り上げました。他の児童からは「三角形が正方形になるなんて思わなかった」といった驚きの声が上がり、図形を多様に見る見方が広がりました。一方で、図形を切り貼りして求めた場合、操作の過程で生じる誤差により9cm²という結果になることもありました(正答は8cm²)。この考え方から、児童は操作による誤差の存在に気付き、正確に面積を求めるためには単位図形の個数を丁寧に数えたり、図形の性質に基づいて変形したりすることの大切さを実感することができました。

適用問題では、指定された面積のシールを作る活動に取り組みました。シールという文脈を生かしたことで、児童は本時で学習した内容を生かして、意欲的に図形を作成する姿が見られました。
作図の際には、この部分とこの部分を組み合わせると1cm²になるといったことを意識し、単位図形がいくつ分になるかを考えながら図形を構成しようとする様子がうかがえました。
このように、児童は単位図形を基準として図形を捉え、条件に合う図形を作り出すことができました。シールという問題場面の中で面積を考える活動は、学習した内容を新たな場面で活用し、数量や図形についての感覚を一層豊かにするとともに、算数の学習を日常生活や社会生活に生かそうとする態度を養うことにつながるものであったと感じています。


[おわりに]
本実践を通して、一般的には知識の定着や習熟のために用いられるドリル教材であっても、教師がその問題に込められた意図を丁寧に読み取ることで、児童の数学的な見方・考え方を豊かに働かせる問題場面として授業に位置付けられることを実感しました。
目の前にある教材一つひとつと真摯に向き合い、その数学的価値を最大限に引き出す授業を展開していくことで、児童は「わかった」「できた」という充実感とともに、「面白い発見があった」という算数の楽しさを味わうことができたと考えています。
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