
教材・サービス
活用実践事例集
2025/05/23
埼玉大学教育学部附属小学校 下村先生の実践 『算数ドリル』を活用した乗法のきまり発見授業
本授業は、埼玉大学教育学部附属小学校の下村先生が『おもしろい発見がいっぱい!算数ドリル』を活用して取り組まれた実践です。単なる計算練習ではなく、乗法に関する規則性を子どもたち自身が見つける学習を展開しました。「どうして?」「面白い!」といった気づきを通して、主体的・対話的で深い学びを実現した授業の様子をご紹介します。
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下村怜史先生
埼玉大学教育学部附属小学校
[1]はじめに
算数科の授業において、教師は教材研究を通して、問題場面の設定や数値の選択など授業の工夫を重ね、主体的・対話的で深い学びの実現に努めていると考えられます。本授業では、ドリルを用いて計算練習を行うのではなく、子どもたちと乗法に関して成り立つ性質について考察する学習場面を設定しました。これにより、子どもたちは計算の原理・法則を再確認し、より深い理解へと繋げることができたと考えられます。
本時では、「おもしろい発見がいっぱい!算数ドリル」3年下(東京書籍版)の[79]の問題を基にして授業を構成・展開していきました。
① 271×41=11111
② 542×82=44444
③ 813×82=66666
[2]授業の実際
導入では、最初に3けた×2けたの問題を3問提示しました。
② 542×41(271×2×41「算数ドリル①の問題の2倍」)
③ 813×41(271×3×41「算数ドリル①の問題の3倍」)
子どもたちは、3つの問題を解く過程で、『あれ?』『どうして?』『面白い!』といった多様な反応を示しました。さらに、教師が指示を与えなくとも、自ら数量の関係や計算の法則(きまり)を見いだし、そのきまりが成り立つ問題をつくり、検証しようとする姿も見られました。このことから、子どもたちは主体的に算数の学習に関わっていく導入となったと考えられます。
一応の解決後に、答え合わせをしました。
② 542×41=22222
③ 813×41=33333
答え合わせをした後に、子どもたちから『次の問題は1084 × 41 = 44444』という式が提示されたため、その問題も板書しました。そして、子どもたちとの対話を通して、学習課題を『答えに同じ数字が並ぶのはなぜだろう?(きまりを見つけよう)』と設定しました。
子どもたちは、乗数がいずれも41であることや、被乗数が271ずつ増加していることなど、乗数や被乗数に着目し、きまりを見つけ出していました。他にも、位に着目するなど様々なきまりを見いだそうとしていました。その中で、ある子どもから『かけられるが2倍、3倍、4倍になると、答えも2倍、3倍、4倍になる』という発言が出てきました。しかし、他の子どもたちからは、それが偶然ではないかという疑問の声が上がりました。子どもたちの間で活発な議論が交わされましたが、結論には至りませんでした。教師が児童から出された意見を板書に整理したことで、このきまりが、かけ算の際にはいつでも成り立つことに気づくことができました。
きまりについて全体交流した後、子どもたちに『22222、33333になる計算式を考えてみよう』という新たな課題を提示しました。計算過程によっては、3けたの乗数が含まれるため、電卓の使用を許可しました。しかし、全体交流で見いだしたきまりを活用して問題解決に取り組む子どもは少数でした。そこで、271 × 41を板書し、着目すべき点を示して、再度取り組ませました。子どもたちは、乗数41に着目することで、被乗数を2倍、3倍にした際に、積に同じ数字が並ぶ規則性を見いだしていました。
最後に、813×82という問題を出しました。多くの子どもたちが、① 271 × 41を基にして、被乗数が3倍、乗数が2倍になっているため、答えは11111の6倍になると結論づけていました。また、ある児童が③ 813×41を基にして、乗数が2倍になっているので、答えは33333の2倍になると発表した際には、発想の豊かさに驚く声があがっていました。振り返りの記述では、きまりを活用していきたいことや、そもそも、なぜ271と41なのかという数値に対して探求していこうとする記述が見られました。
[おわりに]
本授業は、第3学年の3月末に実践しました。年度末は、教科書巻末の練習問題に時間を費やし、知識・技能の定着を確認することが多いと思います。しかし、練習問題やドリルを改めて見直し、子どもたちが主体的・対話的で深い学びができる授業を実践していただきたいと願っております。
『おもしろい発見がいっぱい!算数ドリル』は、子どもたちが計算のしくみや法則に気づき、「なぜ?」と考える力を育むことを目指して開発しました。下村先生の工夫により、まさにその狙い通りの授業が実践され、さらに子どもたちが主体的に規則性を探究する姿が生まれたことを大変嬉しく思います。単なる計算練習にとどまらず、驚きや発見を通して学びが深まる体験は、子どもたちの数学的な思考力を育む大きな一歩です。下村先生の熱意とご指導に敬意を表するとともに、本教材が未来の子どもたちの「学ぶ楽しさ」と「知る喜び」を引き出す一助となることを願っています。
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